対話型鑑賞法とは?
対話型鑑賞とはニューヨーク近代美術館で1984年から96年まで教育プログラムを担当したアメリア・アレナスが考案した鑑賞法で「視覚を用いて考えるためのカリキュラム(The Visual Thinking Curriculum)」を基に開発された。特に思考力や対話能力の向上にも効果を発揮し、単なる知識の詰め込みから脱却した全く新しい鑑賞法とされる。日本では1990年代以降、美術館や学校などの教育機関において盛んに実施されてきた。
対話型鑑賞法の詳細
アメリア・アレナスによる対話型鑑賞の特徴は以下の通りだ。
・鑑賞者は作品をじっくりと見てその絵の中で起こっていることを想像力を働かせてながら自由に物語を作る。また解釈をする。
・個々の自由な意見と他者の自由な意見をぶつけ合わせることで、コミュニケーションを高める。
・作家の意図や作品の知識を一方的に提供することはしない。
・ファシリテーターと呼ばれる進行役は意見をまとめ「はい」「いいえ」で答えられる質問をしない。
語彙力や論理的思考力が高まる
そのような鑑賞法によって語彙力や論理的思考力などコミュニケーションに関する能力が高められるという。そこには美術の知識を詰め込むという知識偏重型の鑑賞法とは全く異なる、美術を通して人間としての能力を高めるという意図がある。
アメリア・アレナスの対話型鑑賞法は従来型の知識を詰め込む鑑賞法とは違い、むしろ知識を必要としない自由な感性を育てる鑑賞法といえる。
しかし、作品の背景やモチーフの意味を理解する知識型の鑑賞法には根強い人気があり、美術館のギャラリートークでもこの手の鑑賞法(解説)がまだまだ多い。しかし、一歩間違えると知識がないと解らない、勉強しないと作品について語れないという泥沼にはまってしまう危険性もある。
小さい子供は積極的に身につけるべき鑑賞法
対話型鑑賞法のメリットは知識がなくても鑑賞者の自由な想像力で作品を見ることができるという点にある。また他者と想像力を競い合うことで感性の競い合いができるという点でも有意義な鑑賞法である。特に小学生や中学生など美術の鑑賞に慣れる段階ではむしろこの対話型鑑賞法は非常に有効であると思う。