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意外と知っているようで知らない!日本画って何なの?

  • 2020年1月3日
  • 2020年6月29日
  • 日本画
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日本画とは何か。実はこの問いに答えるのは簡単なようで意外と難しい。映画の場合は日本で作られたものは「邦画」で海外で作られたものは「洋画」と区別されるが、日本画の場合は日本で作られたものが単純に日本画とはならず、その説明は一筋縄ではいかないのだ。そんな日本画を今回はなるべく優しく説明してみようと思う。

日本画が生まれたのは明治時代

実は、日本画という言葉が生まれたのは明治時代なのだ。明治時代に西洋からたくさんの文物が輸入されたのだが、その一つに西洋画(油彩画)があり、それらと区別するために生まれた言葉である。ではそれまで描かれていた絵画はいったい何と呼ばれていたのかというと、狩野派や円山・四条派、やまと絵など個別の名称で呼ばれていた。

「日本画」という呼称は外国人によって付けられた

そんな日本画という名称を付けたのは日本の政府ではなく、その当時日本で哲学を教えていたアーネスト・フェノロサという外国人だった。美術の専門家ではないフェノロサだったが、もともと美術に関心を持っていたということもあり、来日後は岡倉天心(覚三)と共に東京美術学校(現東京藝術大学)の設立に尽力するなど日本美術の教育・普及に努めた。そんなフェノロサが1882年に行った演説の中で「Japanese painting」の翻訳として「日本画」という呼称が生まれた。

日本画は紙か絹、漆喰に描かれる

伝統的なやまと絵などを含めると数千年以上続く日本画だが、その構成要素はいたってシンプルなのだ。日本画の基底材(支持体ともいう)は絹や紙(和紙)、漆喰などで、和紙は丈夫で数千年間保存ができる。ちなみにこの基底材が油絵だと麻布になるし、水彩画は紙といったものが使われる。

日本画を日本画たらしめるのは膠(にかわ)だった

日本画に使われる材料(顔料)は岩絵具、胡粉、墨、染料などだが、これだけでは絵の具として使えない。ここに膠を混ぜることで顔料が基底材に定着するのだ。膠とは動物の皮膚や骨、腱などから取れるコラーゲンに熱を加え抽出したもである。日本画を日本画たらしめているのは、この膠を使っているからなのだ。ちなみにこれが油絵だと乾性油を使うし、水彩画だとアラビアゴムを使う。

伝統的な日本画は平面的で簡素な表現

では、伝統的な日本画とはいったいどんな絵なのか。もちろん伝統的なやまと絵や水墨画などはそのスタイルが全く違うので一概には言えないが、フェノロサは日本画を5つの特徴で言い当てている。

  1. 写真のような写実を追わない
  2. 陰影がない
  3. 鉤勒(輪郭線)がある
  4. 色調が濃厚でない
  5. 表現が簡潔である

このように見ていくと伝統的な日本画が平面的で簡素、簡潔な表現で描かれていることがわかる。そこには余白も絵の構成要素として重要な要素となっているし、影を描かないなど日本画が西洋の絵画と違い現実の空間を二次元に表すことにこだわっていないことがわかる。日本画と西洋画の違いは日本(東洋)と西洋の文化の違いから来ており、日本と西洋の思想や物の見方が全く違い、その違いが反映されているともいえる。

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