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札付きのワル!犯罪者であり国民的ヒーローでもあるカラヴァッジョとは一体何者?

  • 2020年1月24日
  • 2020年6月29日
  • 西洋画
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カラヴァッジョはイタリアではラファエロと並び称される人気を誇るが、その生涯は波乱に満ちている。度重なる傷害や暴力事件を起こしついには殺人まで犯す。

それにより死刑宣告を受けるがパトロンに助けられ逃げまどう日々を送る。

長期間に及ぶ逃亡生活も最後は熱病によって呆気なく亡くなってしまう。38歳の短い生涯でありながら、イタリア絵画界を騒然とさせたカラヴァッジョの全貌に迫る。

オッタヴィオ・レオーニが描いた「カラヴァッジョの肖像画」

若い頃はリアリズムを追求

カラヴァッジョは13歳でミラノの人気画家に入門。若い頃はとにかくリアリズムを追求していく。「果物籠」はイタリア絵画史上最高の静物画と称されカラヴァッジョの名を一躍有名にした。

カラヴァッジョ「果物籠を持つ少年」

またこの時期は「果物籠を持つ少年」に見られる「妖しい美少年」が人気を博し激しい明暗表現と写実主義で独自の画風を確立していく。

バロックは明暗対比と劇的演出

バロック美術の特徴は何といってもその劇的な明暗対比にあり、感性に訴えかける表現が最大の魅力だ。

その注文主の多くはカトリック教会だった。宗教改革で劣勢に立たされた君主らはカトリックの権威を回復させるために感覚的で分かりやすい表現を求め、一般大衆への布教に利用した。

「聖マタイの召命」で一躍スターダムへ

カラヴァッジョ「聖マタイの召命」

カラヴァッジョの名を一躍広めたのは「聖マタイ伝」の三部作。中でも「聖マタイの召命」ではキリストの背後から神の光がスポットライトのようにマタイを照らしている。明暗表現がキリストとマタイの出会いの場面を劇的に演出している。この作品によりバロック絵画は完成したとされる。

カラヴァッジョの逃亡劇

このように名声を手にしたカラヴァッジョだが、同時に犯罪者としてもその泥沼にはまっていく。数々の犯罪とその後の逃亡劇を追ってみる。

まず、ローマで悪党と対決しボスを刺殺。死刑を宣告されるもローマから逃亡。

その後ナポリでは高い評価を得るが4人組に襲われ重傷を負う。

マルタでは騎士団の団員と刃傷沙汰になり投獄される。しかし、マルタ島の牢屋を脱獄しシチリアへ向かうが、追っての復讐を恐れメッシーナ、パレルモと島を転々とする。

恩赦を受けようと向かったローマの途中で誤認逮捕され、所持していた3作品を没収される。

作品を取り戻そうと向かったポルト・エルコレで熱病にかかり38歳の短い生涯を閉じた。

カラヴァジェスキと呼ばれる信奉者を産む

カラヴァッジョの名はイタリアのみならずヨーロッパ全土に広まり「カラヴァジェスキ」と呼ばれる多くのフォロワーを産んだ。

地位も名声も人気も技術もあり、バロックの明暗表現も確立したカラヴァッジョだが、生来の素行の悪さが災いしてその全てを自ら棒に振ってしまった。その人生は正に「明暗」続きだったといえる。

参考文献:「知識ゼロからの西洋絵画 困った巨匠たち対決」山田五郎(幻冬社)

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