千葉県立美術館で開催中の「後藤純男の全貌」展を見てきた。後藤純男は千葉県出身の日本画家で日本美術院(院展)を中心に活動した作家で大和古寺のシリーズや中国の雄大な風景がで知られる。東京藝術大学の教授を務めるなど86歳の生涯を日本画一筋で過ごした画家だ。
後藤純男が生まれたのは千葉県東葛飾郡木間ヶ瀬村(現在の野田市)の真言宗の家。僧侶となるための修行を積むかたわら絵を描き、22歳で院展に初入選。それを機に仏門を捨て絵の道に進むことを決意する。初期は伝統的な日本画を習得し、戦後はマチエールを生かしたキュビズム的構成の滝シリーズなど新しい日本画を目指していく。
中国の桂林など自然が生み出した壮大な風景を緻密な筆致で描くなど国外に取材を求めて、襖絵にしていくなど精力的に活動していく。そして圧巻なのは長谷寺に奉納された襖絵で、縦2メートル、横5メートルを超える2つの襖に、夏と冬の山水をそれぞれ描き、季節の厳しさを画面いっぱいに表現し畢生の大作となった。
医師の日野原重明氏との交流も後藤にとって刺激となっていたようで、今展でも後藤の日本画に着想を得た日野原氏の書が展示されていた。
そして、後藤といえばやっぱり大和古寺シリーズだろう。法隆寺や鹿苑寺など金泥や金箔できらびやかに彩られた古寺は、長い年月をその土地の人々と共に生きた存在の証であり、自然と溶け込むような幽玄な存在感が感じられる表現となっている。
後藤が愛用した日本画材や筆などの展示は日本画に馴染みのない人でも興味を持つものだろう。岩絵の具の粒子が膠によって定着するその仕組みを知ることで日本画が持つキラキラした輝きを再発見することができる。
後藤純男といえばネスカフェ・ゴールドブレンドのCM「違いがわかる男」で有名だが、その違いとは日本や中国の自然を自分の目で見て、それを肌で感じ、その体験を日本画の画材でどのように描けば良いのかが、わかるということを意味してるのかもしれない。