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美人画、役者絵、風景画…。こんなにあるの?浮世絵のジャンル。

  • 2020年3月8日
  • 2020年6月29日
  • 浮世絵
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葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」

浮世絵の始まりは17世紀後半に遡るが、初期の浮世絵では遊里や芝居町といった歓楽街の風俗を描くことが多かった。

江戸という都市はご存知の通り、江戸幕府の元で旗本や御家人、そして全国の諸大名の藩士が数多く住む一大都市であった。一説によると18世紀初頭に人口はすでに100万人を超えていたという。そのような人口のもと、経済活動も活発になり消費文化が花開く。浮世絵はそのようなニーズにマッチした格好の嗜好品であった。

当初は遊里などの風俗画が主体であった浮世絵のジャンルも、やがて地方から江戸を訪れる人が増えるにつれ、江戸の名所などを扱った名所絵や風景画が描かれるようになる。そして当然のごとく趣味趣向が多様化するにつれ様々なジャンルの浮世絵が制作されるようになっていく。

今回はそのような浮世絵の多様な一面をご紹介したいと思う。

美人画

喜多川歌麿「ぽっぴんを吹く娘(婦人相学十躰)」

浮世絵の主要なテーマであり浮世絵といえば「美人画」を思い浮かべる人も多いと思う。初期の浮世絵では遊里の女性を描いていたが、鈴木春信らの活躍により徐々に一般の庶民もその対象となっていく。美人画のスタイルも春信らの頃は全身像が多かったが喜多川歌麿は大首絵のクローズアップした構図を得意とした。

役者絵

東洲斎写楽「三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛」

役者絵も浮世絵のジャンルとしては非常に多い。現代風にいうと俳優のポスターといった感じだろうか。多くの絵師が活動の初期に役者絵を描いており、中には楽屋風景を描いたものもある。鳥居派や勝川派、写楽、歌川派らが役者絵を得意とした。

花鳥画

花鳥画では花や草木、植物、鳥獣、虫などが描かれる。古来より花鳥画は伝統的なテーマであったが、葛飾北斎や歌川広重などが好んで描いており、短冊や扇子など様々な形の浮世絵が生まれている。

物語絵・歴史画

「源氏物語」などの古典文学に取材した浮世絵を指す。鈴木春信は古典的な主題を現代のシチュエーションに当てはめる「見立絵」を好んで描いており、以後多くの絵師が手掛けるようになった。

歴史画は明治期に出版された教育的要素の強い版画である。浮世絵はもともと本の挿絵からスタートしているので、文学的な主題とも親和性がある。

戯画

歌川国芳「みかけハこハゐが とんだいゝ人だ」

ユーモラスな発想がもとになっている「戯画」だが、歌川国芳が得意としたジャンルである。動植物を擬人化したものなどがある。なぞなぞの要素がある「判じ絵」もここに入るのだろう。

風景画

歌川広重「東海道五十三次之内 蒲原」

文字通り風景を描いた浮世絵。奥村政信らによって提唱された、浮絵(遠近法を強調した絵)をきっかけに風景画のテーマは一気に人気となった。折しも十返舎一九の「東海道中膝栗毛」のヒットにより葛飾北斎や歌川広重といった風景画家が各地の名所を描いてその地位を不動のものとした。

風刺画

社会の世相を風刺した浮世絵で、天保の改革など社会が不安定になると描かれることが多い。ユーモラスな表現を使うことが多いが、根底には批判精神があるので、絵師も版元も検閲の目をかいくぐって出版した。

相撲絵

歌川国貞「春日山 越ノ海」

江戸庶民に人気のあった力士を描く相撲絵。実際の土俵上の姿や支度部屋の様子など表現形態も様々である。鳥居派や勝川派、歌川派などが得意とした。

死絵

最後のブロマイドとも称され、著名人を追悼するために制作される。特に役者を描いたものが多く、その役者の肖像画と共に辞世の句や生没年、法名などが記された。

春画

江戸時代の開放的な性をデフォルメで描く春画。春画を描いていない絵師はいないと言われるほど多くの絵師がかかわったジャンルである。海外でも人気が高く「アート」の一つとして認知されているが、日本ではまだまだタブー視されているのが実情。


浮世絵にはこのように様々なジャンルがあるが、それは裏を返せば江戸庶民の成熟度を示している。趣味や趣向が異なる庶民の嗜好性に合わせて版元や絵師が次々と新しいスタイルの浮世絵を発表していったのだ。浮世絵が現在、世界で人気を博している理由はジャンルやスタイル、バリエーションなどその圧倒的な浮世絵の幅の広さにあるのだろう。

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