今年1月にリニューアルオープンした話題のアーティゾン美術館に行ってきました。長らくブリヂストン美術館の名で親しまれてきた美術館が2015年より4年8ヶ月の歳月をかけて改修工事を行い、先月、名前も新たにリニューアルオープンしたのです。65年以上、石橋財団がコレクションを積み上げてきた総計は約2,800点に及びます。
アーティゾン美術館の名前の由来は「ART(アート)」と「HORIZON(ホライゾン:地平)」を組み合わせた造語で、時代を切り拓くアートの地平を感じてもらいたいという願いが込められています。
オープニングの展覧会ではアーティゾン美術館が誇る国内・海外の超一流作品が見られるとあって否が応でも期待が高まります。そんな見応え十分の展覧会をレポートしたいと思います。
まず初めにチケットを予約
アーティゾン美術館は日時指定予約制で、美術館のホームページから予約できます。時間区分としては5つ。
1. 10:00〜11:30
2. 12:00〜13:30
3. 14:00〜15:30
4. 16:00〜17:30
5. 18:00〜19:30(金曜日のみ但し、日・祝日を除く)
指定した時間内であれば、いつでも入館可能で一旦入れば時間無制限で見ることができます。
私が行ったのは平日の昼過ぎということもあり、1時間前でも十分予約ができ入館もスムーズでした。
アーティゾン美術館入館まで
アーティゾン美術館へのアクセスは非常に良い。東京駅から目と鼻の先にあり、実際、駅から500m、歩いて8分で到着します。
真新しくおしゃれな建物に入るとエスカレーターで2階まで上がって行きます。そこで荷物をコインロッカーに預けるのですが、このコインロッカーからしておしゃれです。今回は99番にしてみました。
エスカレーターを上り3階に到着すると受付が見えてきます。事前予約したチケットをスマホで表示して、読み取りが完了すると晴れて入館可能となります。
しかし、これで入れるかと思いきや、ここからさらに検査ゲートがあり不審なものがあるとボディーチェックを受けることになります。あいにく、私はカメラが金属探知機に反応し警備員さんの手を煩わすこととなりました。
※館内は写真撮影が可能です。
ボディーチェックを通過するとエレベーターを使って展示会場に向かいます。展示会場に着くと何やら看板があり、見てみると音声ガイドアプリの案内でした。
そう、アーティゾン美術館では音声ガイドが無料なのです。もちろん専用アプリの導入は必要ですが、他の美術館では通常、数百円かかる音声ガイドが無料なのは嬉しい。
また、これは作品鑑賞へも良い影響があり、作品の近くに作者やタイトル、制作年などが記載されたキャプションがありますが、その他に解説まであるとどうしても気になってしまいます。
なので、今回の展示のように作品とキャプションだけであれば、じっくり作品と向き合えるので非常に良いと思います。もちろん解説が欲しければスマホの画面から読むこともできます。
超一流の収蔵作品
今回の展覧会は「開館記念展 見えてくる光景 コレクションの現在地」ということで、アーティゾン美術館が誇る超一流の作品を206点も惜しげもなく展示しています。以下に美術館のサイトから見どころ列記しました。
①新収蔵作品から31点を初公開
休館中も作品収集を行なっており、今回モリゾ、カサット、カンディンスキー、ジャコメッティ、松本俊介など31点が初公開となっています。
②コレクションへの新たな視点
第1部「アートをひろげる」と題した展示空間では、1870年代から2000年代までの近現代約140年間の美術を俯瞰します。芸術家たちによる様々な実験や革新の積み重ねで、美術の概念を押し広げて行った歴史を体感することができます。
第2部「アートをさぐる」では古今東西の美術を7つのテーマで展示します。装飾、古典、原始、異界、聖俗、記録、幸福というテーマに沿って展示していきます。
③従来に無い鑑賞体験の提供
旧美術館よりも倍の展示面積があり、最新の機能と設備により開放的な空間を実現。日本古来の美術作品を展示するための部屋を新設し、古代から現代までの人間が創造を行なってきた軌跡をたどることができます。
異種格闘技のような作品展示
第1部の「アートをひろげる」では近現代の偉大な芸術家の作品が並びます。その様はまさに圧巻の一言です。マネ、セザンヌ、モネ、ルノワール、ロダン、ゴーガン、ピカソ、ポロックなど超有名な画家が所狭しと並んでいて、改めて石橋財団コレクションの質の高さに驚かされました。
青木繁「海の幸」
また青木繁の「海の幸」や藤島武二の「天平の面影」など4点の重要文化財が展示されています。
青木繁の「海の幸」は教科書で何度も見た作品ですが、等身大くらいの大きさだと思っていましたが、実際には縦が70cm程しかなく、その小ささにびっくりしました。
こういう体験は図版だけでは得られないもので、やはり実物を見る大切さを実感しました。
西洋と東洋、古典と近現代の「異種格闘技」
また「印象派」や「抽象画」「表現主義」など様々な表現様式の作品が所狭しと並べられていて、ある意味「異種格闘技」の様相を呈しています。こういう「異種格闘技」では表現様式を味わうのも良いですが、もっと純粋に作品そのものを感じてもらいたいです。
これだけの異なった様式の作品があれば、純粋にどの作品が好きか、どの作品が嫌いかが自ずと分かると思います。なので、まずは一通り作品を流し見して気になった作品をじっくり鑑賞してみてはいかがでしょうか。全部をじっくり見ようとすると後半、必ず疲れてしまうので、適度にメリハリをつけた鑑賞をお勧めします。
日本美術を鑑賞するための特別な部屋
今回のリニューアルに際して特別に設置されたのが、日本古来の作品を鑑賞する空間です。「洛中洛外図屏風」は極度に照明が落とされた空間で鑑賞するのですが、古来より日本美術は暗がりで見るものであり、文字通り昔の鑑賞を体験できる仕組みとなっています。「洛中洛外図屏風」は金箔の背景に京の市内外の風景が描かれていますが、その細かさと鮮やかさに目を奪われました。
作品以外のところにも注目してみる
額縁の違いに注目
今回の展示では西洋の作品もあれば、日本の作品もあります。技法も油絵(油彩画)もあれば日本画もあり、面白いのは油絵と日本画の額縁の違いです。
西洋の油絵では額縁は装飾的で豪華なものが多く、対する日本画はシンプルで簡素な作りのものが多いです。
油絵は堅牢な構図で絵具の質感もあり「こってり」しているのが特徴で、対する日本画は余白を大きくとり、塗り方も薄塗りで「あっさり」しています。
それゆえ、額縁にも「こってり」している油絵には装飾的で華美なものが合いますし、日本画の「あっさり」した絵にはシンプルな額縁がマッチするのです。
疲れたらソファに座る
展示の後半になると必ず疲れてきます。もちろん1時間近く立ちっぱなしなので、疲れるのは当然です。そんな時はソファに座って鑑賞しましょう。美術館は鑑賞者に配慮した空間になっているので、ソファや椅子が必ずあります。だから遠慮なく座りましょう。
アーティゾン美術館のソファは革製ですが、側面はステンレスのメッシュ構造となっています。金属的で冷たい印象があり、座りにくく感じますが、実際座ってみると案外しっくりきます。ぜひ座ってみて欲しいと思います。
ミュージアムショップには必ず立ち寄ろう
美術館に来たらショップに立ち寄らない訳にはいきません。見た目にもおしゃれなショップを覗いてみるとポストカードやクリアファイル、缶バッチ、一筆箋、トートバッグなど定番アイテムが所狭しと並べられていて、見ているだけで幸せな気分になります。
迷いに迷って今回ゲットしたのがこちら。「マメモ」というメモ帳で「豆」と「メモ」の造語のようです。入れ物のカバーも可愛らしく一見すると、ようかんのようにも見えます。
美術館がオープンしたのは1952年で、アーティゾン美術館は半世紀以上の歴史があることになります。コレクションは一流のものばかりで美術に興味のない人でも必ずいい刺激になると思います。ぜひ一度、足を運んでみて欲しいと思います。
現在の展覧会情報
展覧会名「ジャム・セッション 石橋財団コレクション×鴻池朋子
鴻池朋子 ちゅうがえり」
会期:2020年6月23日[火] – 10月25日[日]
開館時間:10:00 — 18:00
休館日:月曜日 (8月10日、9月21日は開館)、8月11日、9月23日
主催:公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館
詳しくはこちら